医療法人について



Q.
医療法人のメリットは何ですか?

 

A (メリット)

  節税効果が期待できます。  

  社会保険診療報酬基金から入金される際の源泉徴収がなくなるため、資金繰りが楽になります。

(ただし、理事報酬等の給与に対する源泉徴収は行います。)

  役員(理事長・理事など)に対し、退職金の支給をすることができます。  

  医療法人契約の掛け捨て生命保険等、一定の契約条件を満たした生命保険契約や損害保険契約の保険料を損金(経費)にすることができます。法人契約にする事により、法人税と個人の家計費双方の負担が軽減されます。  

  社会的、対外的信用が向上し、金融面では事業資金調達力が強化されます。  

  設立当初2会計期間は、消費税の納税義務が免除される場合があります。  

  医療法人は、決算日を自由に設定することができます。  

  欠損金の繰越が 7年間 認められます。  

  医療法人のM&Aが可能となります。  

  医療法人における事業費と個人的な家事費とを明確に区分する事ができるため、個人的な恣意性による「どんぶり勘定」的な要素が排除できます。


.医療法人のデメリットは何ですか?

 

A (デメリット)

  理事や職員など医療法人に従事している方が、健康保険や厚生年金等の被保険者に該当する場合には、社会保険に加入しなくてはならないため 医療法人の負担が増加します。

(ただし、健康保険については従来の医師(歯科医師)国民健康保険組合に加入し続けることができます。)  

  飲食やゴルフ接待などで支出した接待交際費については、法人税の計算上、資本金の額に応じて損金のとなる金額に限度があります。

原則として、法人税法上接待交際費として支出された金額の10%は、医療法人の損金になりません。  

  純資産の登記手続きなどの事務負担が増加します。  

  医療法人のお金は、院長の自由にはなりません。  

  医療法人契約の生命保険契約で、医療法人に保険金が入金になり、所得が発生した場合には、法人税などが発生します。

(税金の負担については「Q4 (メリット) ④」と相対的なものとなります。)  

  持分の定めのない医療法人の場合、解散時の残余財産の帰属先は、国・地方自治体・医師会等になります。

(平成19年4月1日以降、持分の定めのある医療法人の新設は認められなくなりました。)

 
 Q.基金拠出型医療法人の財産は誰のものですか?
                       又解散時の残余財産はどうなりますか?




   A 基金拠出型医療法人の財産は、設立した理事のものではありません。

   公益的な考え方から、誰も財産(持分)をもてない制度になっています。

   解散時における残余財産は

   ①国
   ②地方公共団体
   ③公的医療機関の解説者
   ④財団又は持分の定めのない医療法人
   ⑤都道府県医師会又は郡市医師会

   のうちいずれかに帰属されます。


   医療法人の財産≠設立者の財産

   医療法人は下記の事由が生じた場合に、解散となります。

   ①社員総会の決議
   ②社員の欠亡
   ③他の医療法人との合併
   ④破産手続き開始の決定
   ⑤設立認可の取消し


   旧来の医療法人の定款によると、「本社団が解散した場合の残余財産は、払込済
   出資額に応じて分配するものとする」という文言が入っている為、出資額に応じた
   財産の分配が認められていました。

   但し、残余財産の分配を認めてしまうと、利益が出た法人を意図的に解散させ
   利益を分配するということも起こりえるのを考慮し、医療法人の根本にある
   「非営利性」を元に国、地方公共団体又は他の医療法人等に残余財産を帰属させる
   ことにしたのです。

   そうしたことから今後医療法人では、後継者が決まっていない医療法人での高額な
   設備投資や資産の購入は計画性をもって検討することが必要となります。

   また、19年4月以前の医療法人は旧来の方式のままで良い事となっています。


Q 
平成194月の医療法人制度改正によってどの様に変わりましたか?
 

    A 第5次医療法改正にともなって医療法人制度は、新たな類型として
基金拠出型法人等が創設されるとともに、今後の医療法人の方向性を示す
改革となりました。

今医療法人制度改革では医療法人の「非営利性の徹底」「公益性の確立」
「効率性の向上」「透明性の確保」「安定した医業経営の実現」を図る観点から


  ・解散時の残余財産の帰属先の制限

  ・医療法人の附帯業務の拡大

 ・医療法人のガバナンスの強化

を中心とした見直しが行われました。



具体的なポイントとしては


①解散時の残余財産の帰属先


持分の定めのある社団医療法人について解散時に出資持分に応じた
残余財産の分配を受けることは実質的に配当に当たるのではないか
(非営利性の形骸化)という指摘から、新制度の下設立される基金拠出型
医療法人においては残余財産の帰属先を出資者ではなく
国・地方公共団体等から選定することとなりました。


②管理体制の見直し・強化


提供する医療の質の向上及びその運営の透明性の確保を図ることが
法律上求められるようになりました。

理事・監事の任期の明文化、監事の職務の明文化
事業報告書・監事の監査報告書の作成が義務付けられました。
また都道府県に提出された事業報告書等の閲覧についての規定が
設けられました。


③附帯業務の拡大


医療法人が行うことのできる附帯業務に有料老人ホームや高齢者専用住宅の
設置などが認められることとなりました。


④自己資本比率の規定の廃止


従来医療法人の資産要件として定められていた“自己資本比率が20%以上
であること"という規定が廃止されました。


⑤事業報告書等の強化


医療法人は毎会計年度終了後2ヶ月以内に事業報告書等
(事業報告書・財産目録・貸借対照表・損益計算書など)の作成をしなければ
ならないこととなりました。
これら事業報告書等は、理事から監事に提出され、監査を受けることとなります。


 Q 医療法人の会議・運営について教えてください。

 
A 社団医療法人の会議・運営

 ① 会議の種類

  社団医療法人は定款の規定に基づき、社員総会と理事会の2つの会議が設置されています。

 ② 社員総会

  社員総会は、「社員」により組織されるものであり、医療法人の最高意思決定機関です。
  社員総会は、定時総会と臨時総会とに分けられます。
  定時総会は、一般的には、毎年2回開催されることとなります。事業計画の決定の時期及び、決算確定の時期です。
  また、臨時総会は、理事長が必要であると認めるときなどに、その都度、開催されることとなります。

 ③ 社員総会での議決が必要な事項

  医療法人の運営事務の基本的、かつ、重要な事項については必ず社員総会の議決が必要となります。

  主な事項は次の通りです。

  (1) 定款の変更(県等の承認が必要)
  (2) 基本財産の設定及び処分(担保提供を含む)
  (3) 毎事業年度の事業計画の決定及び変更
  (4) 収支予算及び決算の決定
  (5) 剰余金又は損失金の処理
  (6) 借入金額の最高限度決定
  (7) 社員の入社及び除名
  (8) 本社団の解散
  (9) 他の医療法人との合併契約の締結
  (10)その他重要な事項

 ④ 社員総会の招集と議決

  イ 社員総会の招集

  社員総会の招集手続きは、通常、期日の少なくとも5日前までに、会議の目的である事項、日時及び場所を記載し、理事長がこれに記名した書面で社員に通知することとなっています。

  また、総社員の5分の1以上の社員から会議に付議すべき事項を示して臨時総会の招集を請求された場合には、その請求があった日から20日以内に、会議を招集しなければなりません。


 ロ 社員総会の議決

  社員総会の議長は社員総会で選任されます。
  社員総会の議事は、定款に別段の定めがある場合を除いて、出席した社員の議決権の過半数で決し、可否同数のときは、議長が決するものとなります。ただし、解散については、総社員の4分の3以上の賛成がなければ、決議をすることができません。
  なお、定款に別段の定めがある場合を除いて、議長は社員として議決に加わることができません。
  また、会議の議決事項について特別の利害関係を有する者は、その事項について議決権を行使できません。


 ハ 議決権

  社員は、社員総会において、1人1個の議決権を有しています。
  拠出の有無、多寡にかかわらず、1人1個ですので注意が必要です。


 ⑤ 議事録の作成

  社員総会終了後、議事録を作成し、主たる事務所に備えておくことが必要です。
  議事録に記載する主な事項は次の通りです。

   イ 日時、場所及び出席者名
   ロ 議長の定足数確認、開始宣言及びその時刻
   ハ 報告事項
   ニ 議題 (議題毎に提案、発言、討議及び決議の内容の要旨を記載)
   ホ 議長の終了宣言及びその時刻
   ヘ 出席社員全員の署名


 ⑥ 理事会
 
  理事会は、社員総会において決議された法人の意思決定を円滑に進める職務執行機関に相当し、理事長が必要であると認めるときなどに、その都度、開催されることとなります。

  一般的には、理事会の議事についての細則は、理事会で定めることとされています。


 ⑦ 基本事項

  医療法人の行う行為は、定款等、法令又は社員総会等の決定に従うものとされています。予算に計上されていない借入や多額の設備投資などは社員総会の議決を経る必要があります。


 ⑧ 特別代理人の選任

  医療法人と理事長との利益が相反する事項 (例 : 医療法人と理事長間での不動産  の売買等)については、理事長は代表権を有せず、特別代理人を選任して医療法人を代表させることになります。
  この場合、都道府県知事に対して特別代理人選任申請が必要になります。


 ⑨ 業務の範囲

  医療法人は定款等又は法令の規定する業務以外の業務は、収益と伴わないものであっても行うことができません。
  ただし、社会医療法人及び特別医療法人(平成24年3月31日まで存続)については、厚生労働省告示で定める範囲で収益業務を行うことができます。


 ⑩ 剰余金配当の禁止

  医療法人は、出資又は拠出に対し配当を行うことは禁止されており、事実上、配当とみなされるような行為も禁止されています。


Q
事業報告書等の閲覧制度について教えてください。
 

A ・医療法人の社員、評議員、債権者から決算書等閲覧請求があった場合には、正当な理由がない限り、開示しなければなりません。

開示する書類は、事業報告書等、監事の監査報告書、定款又は寄附行為です。
 

1、各事務所での閲覧

医療法人(社会医療法人を除く。)は、次に掲げる書類を各事務所に備えて置き、その社員若しくは評議員又は債権者から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これらを閲覧に供しなければならないとされています。

(閲覧に供される書類)

①事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書

②監事の監査報告書

③定款又は寄附行為  

この取扱いは、平成19年4月1日以後に始まる会計年度から適用されます。  

2、閲覧を行わないことができる「正当な理由」

事業報告書等の閲覧について、この閲覧を行わないことができる「正当な理由」としては、個人情報の保護の場合や法人の業務の運営が不当に害される恐れがある場合、法人の執務時間外の閲覧請求などの場合が考えられます。  

3、都道府県での閲覧

都道府県への届出書類は、債権者等の他一般の者も閲覧可能です。閲覧請求があった場合、正当な理由があるか否かを問わず、これを閲覧に供しなければなりません。

閲覧の対象書類は、過去3年間に提出された新様式の書類について行われます。

つまり、基本的には過去3年間に提出された書類が閲覧対象となりますが、平成20年6月末届出期限の場合には、平成20年3月期の書類のみが閲覧の対象になります。

(3月決算の場合)

 


Q基金拠出型法人と経過措置型法人の違いは何ですか?

 A 基金拠出型法人とは平成19年4月1日の新医療法施工後に通常設立される医療法人の形態をいい、持分の定めがありません。一方、従来の法人とは、平成19年3月31日以前に設立された、持分の定めのある形態の医療法人をいいます。

   

Ⅰ・社団医療法人

 

基金拠出型法人

経過措置型法人

出資持分

なし

あり

定款の記載方法

・社員資格喪失時

(定めなし)

【出資額限度法人】

社員資格を喪失した者は、その出資額を限度として払戻しを請求することができる。

【持分あり医療法人】

社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。

・残余財産処分

本社団が解散した場合の残余財産は、次の者から選定して帰属させるものとする。

(1)

(2)地方公共団体

(3)公的医療機関の開設者

(4)都道府県医師会又は郡市区医師会

(5〉財団医療法人又は出資持分なしの社団医療法人

【出資額限度法人】

本社団が解散した場合の残余財産は、

払込済出資額を限度として分配するものとし、当該払込済出資額を控除してなお残余があるときは、社員総会の議決により、○○県知事(厚生労働大臣)の認可を得て処分するものとする。

【持分あり医療法人】本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。

 


設立認可書提出時に必要となる書類は?

A 医療法人の設立にあたり、都道府県の仮受付けを受ける際に医療法人設立認可申請書に以下の書類を添付することとなります。

医療法人設立申請書類

添付書類

 

留意点

設立認可申請書

 

法人の主たる事務所の所在地は定款と一致しているか

住所は番地まで正確に書いているか

定款

 

モデル定款に倣っているか

法人名、医療機関名は他の書類と一致しているか

設立当初の役員と役員名簿は一致しているか

会計年度と総会月は一致しているか

設立時の財産目録

医業未収金を出資する場合は根拠資料を添付

作成日は設立総会の日より前であること

必要な機器は拠出されているか

各内訳明細書及び拠出契約書と合致するか

資産の内訳明細書

預金・医業未収金等の

明細、残高証明

2か月分の運転資金が現預金及び医業未収金で確保されているか

医療機械器具等の内訳明細書

医療機械器具等を拠出する場合に必要

減価償却表又はこれに替わる根拠資料の添付

負債の内訳明細書

負債を引継ぐ場合に必要

負債で購入したものは出資されているか(購入額を示す書類の添付)

リース引継承認願

リースを引継ぐ場合に必要、リース契約書の写しの添付

基金拠出契約書

 

 

基金の募集通知

 

設立総会以降の日付

基金の引受申込書

残高証明

設立総会以降の日付

基金の割り当て決定

 

設立総会以降の日付

設立趣意書

 

モデルに倣っているか

施設の概要

 

建物の面積が契約書の面積と合致するか

従業者数は常勤換算後の人数を記入しているか

土地及び建物の賃貸借契約書

または覚書の写し

土地建物を賃貸借する場合に必要、登記簿謄本添付

賃借料の算定根拠はあるか

賃貸借期間が5年以上もしくは自動継続条項があるか

貸借範囲に業務と関係ない部分が含まれていないか

契約書の賃貸人と登記簿の所有者は一致しているか

周辺図、配置図、

建物平面図

 

医療施設の範囲を明示しているか

役員及び社員の名簿

理事3名以上

社員3名以上

役員が関連会社の役員ではないこと

履歴書の記載内容と一致するか

役員及び社員の履歴書

それぞれの印鑑証明を添付

 

役員の就任承諾書

 

 

管理者就任承諾書

管理者は理事であること、

医師免許証の写しを添付

 

原本証明書

 

証明日は証明する書類の発行日以後であること

Q医療法人設立から開設まではどのようなスケジュールになっているのでしょうか?

A 医療法人設立認可申請書の作成から医療法人開始まではおおよそ6ヶ月は必要とされます。


開  設


法人設立までのスケジュールについては以下のようになっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

※1 医療法人設立認可申請の日程は各都道府県によって異なりますが、年2回行
われています。


※2 設立に必要な手続終了後2週間以内に行ってください。

※3 登記日から2週間以内に行ってください。

また、設立後の諸手続につきましては以下をご参照ください。    ※1


※1その手続として、銀行口座の変更、公共料金の名義変更、出資または寄附を受けて法人の資産となったものの名義の書換え手続も必要となります。また、医療法人化に伴い理事長はじめ従業員等の健康保険、厚生年金保険への加入義務も発生するため、それらへの加入手続きも必要となります。


Q 医療法人の業務内容を教えてください

 

A 医療法人が行うことの出来る事業は、原則として、病院、診療所又は介護老人保健施設のみです。

しかし業務に支障のない限り、定款又は寄付行為の変更により他の医療に関係する業務も運営することができます。

 

解説

Ⅰ・本来業務【医療法第39条】

○ 医療法人は病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設の開設を目的として設立される法人である。

 

Ⅱ・附帯業務【医療法第42条1】

○ 医療法人は、その開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務に支障のない限り、定款又は寄付行為の定めるところにより、次に掲げる業務の全部又は一部を行うことができる。

 

医療法人は、上記により、本来業務のほかに医療法第42条各号に定められている業務を行うことができます。

しかし、附帯業務については、委託すること、又は本来業務を行わず、附帯業務のみを行うことは医療法人の運営上、不適当であるとされています。

 

内容

具体例

医療関係者の養成又は再教育

看護専門学校、リハビリテーション専門学校

後継者等に学費を援助し医学部等で学ばせることは該当しない。

医学又は歯学に関する研究所の設置

腫瘍医学研究所、臨床医学研究所

設置目的が医療法人の目的の範囲を逸脱するものでないこと。

医療法第39条第1項に規定する診療所以外の診療所の開設

巡回診療所、へき地診療所

医師等が常時勤務していない診療所でもよいとする。

疾病予防のために有酸素運動を行わせる施設

メディカル・フィットネス(厚生労働省令の施設要件を満たすもの)

「厚生労働大臣の定める基準」については、平成4年7月1日厚生省告示第186条を参照のこと

疾病予防のために温泉を利用させる施設

クアハウス(厚生労働省令の施設要件を満たすもの)

同上

有料老人ホームの設置

 

老人福祉法に規定するもの

その他保健衛生に関する業務

下記*参照

*その他保健衛生に関する業務とは?

保健衛生に関する業務については、厚生労働省より通知が出されており、主に以下の業務が運営可能となっています。

事業の種類

内容

衛生事業

薬局、施設所、衛生検査所

介護事業

訪問看護ステーション、介護福祉士養成施設、ケアハウス、ホームヘルパー養成研修事業

社会福祉関係

難病患者等居宅生活支援事業、病児、病後児保育事業

高齢者支援

高齢者等の介護予防、生きがい活動支援事業、在宅介護支援事業、高齢者専用賃貸住宅

患者の送り迎え

介護保険法に規定する訪問介護その他一定の事業と連続して、又は一体としてなされる患者等の有償移送行為で、道路運送法に規定されているもの

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