新規開業の為の知識
事務所の資料を整理していたら、昔事務所で勉強会を行ったときの資料が出てきたので
参考までに載せておきます。今でも有効な部分があろうかと思います。
A 診療所・クリニックの開業
1.診療所の基本
①プライマリーケア主体(検診・予防医学・在宅医療)
②専門医療提供(日帰り手術・検査のみ)
③総合医療提供(複数の診療科と専門医が勤務、地域の二次救急体制の要)
2.診療所のオフィス形態
①住宅型(居宅・事務所一体型、往診)
②一般ビル入居型
③医療ビル入居型(ビル内協力)
④移動オフィス型(現時点では一部、今後在宅医療で増加?)
3.強い診療所
(1)どうあるべきか。
過去・・・立地(住居・職場に近い)
将来・・・使命感を持ち、患者に対応
診療所は零細企業という意識を忘れない
現在は診療所にとってピンチとチャンスが併存する状況である
急性期病院は急速に外来患者を縮小 → 診療所で受診
(2)マーケティング重視の診療所経営
・厚生労働省の動き・・・役割分担、大病院から診療所への移行
・診療所のマーケティング
①
自院の患者データの分析(新患・再来患者の推移、
患者数増減の理由、患者の形態〈疾患・居住地・勤務先〉分析など)
②
医療圏調査の実施(「理想と現実の溝を埋めるため」
製薬企業MR、医薬機卸MS)
③
競争優位の確立(患者接遇の強化、専門化による差別化)
④
他の医療機関との連携
⑤
その他(ホームページの開設による地域の健康相談)
(3)厚生労働省の狙い・・・病院から在宅へ
①
介護保険の見直し・・・在宅重視、施設療養費に対して厳しい報酬体系
②
診療報酬改定で誘導・・・「在宅への動き」
4.収益性の高い診療所になるために必要なこと
(1)基本
新規患者数を増加させつつ、コストを削減していく
現在の患者さんをリピーターにしていく
(2)時間の対策
①
患者さんの待ち時間対策
・予約制の導入
・診療待ち時間表示や待ち人数表示
・雑誌や新聞の配置
・テレビ
・絵画、観葉植物、水槽
②
標榜時間対策
・地域患者のライフスタイルへの適合
(社保本人や子供が多い場合は日曜通常診療)
(3)クレーム対策
待ち時間の短縮及び職員の接遇態度の向上がポイント
・経営理念の統一化
・クレーム情報の管理(データベース化)
・クレーム情報の報、連、相(トップへの通知)
・患者さんの声の調査
・職員満足
(4)経費節減対策
①水道光熱費
無駄な使用を省く。
ただし、患者さんが直接利用する場所については
アメニティを損なうことにもなるため回避
②通信費、文具什器費
通信機器は複合機の利用
文房具は通信販売の利用
③旅 費
研修旅費等はインターネットを利用(安価、時間の効率化)
④業務の効率化
カルテ保管について、50音順ではなく、ID番号順の保管方式の採用等、
結果的にコスト増を招くことをやめる。
5.診療所経営における重要なキーワード
(1)アメリカの開業医の現状
・
患者さんは救急以外ではかかりつけ医の受診が原則
・
個々のかかりつけ医は病院と契約し、入院が必要な患者さんを病院へ紹介、
その開業医が入院患者を診察する 例)日帰り手術クリニック
大規模日帰り手術センターに外科系開業医が登録、
自分の患者の手術が必要になったときは患者と一緒にセンターに来て手術を行う
という「手術室のアウトソーシング化」(医療資源の有効活用)
日本の医療制度改革の方向性は、このアメリカ型の市場原理が働く
医療制度に向かっている
(2)経営のキーワード
・かかりつけ医機能の充実、在宅医療の充実(特に内科医)
・大病院との連携(お互いにメリットがある)
・介護保険事業所、施設との連携
・専門性特化(広告によるアピール)
広告規制については「特定多数」が対象であれば良い
ホームページは可
・業務効率化の改善(PDCAのサイクルを繰り返す)
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B MS法人と在宅医療
(1)
MS法人(メディカルサービス法人)
・
MS法人は、1970年後半から増加
・
当初の目的
①
ダントツで合法的な節税(税金対策を目的としたトンネル会社)
②
医療周辺業務、診療行為と管理業務の分離により医師が医療に専念
・
今後の目的
①
新たな資金調達方法
②
民間企業とのアライアンスの構築(同盟・縁組み)
③
規制改革により、病院経営への民間企業の算入が可能となった時の布石
・
今後は医療法人のノウハウの切り売り、システムの共同使用など横のつながり
・
医療のアウトソーシング会社であるMS法人が、ノウハウの吸収やリスクの
軽減事業スピードアップによりさらに進化できる
(2)
在宅医療とは
・
在宅医療とは、患者さんの自宅で診療や治療を行うシステムである。
・
疾患を抱えていて定期的に医療を受ける必要があるが、寝たきりなどで
外来通院をするのが困難な患者さんを対象に定期的に自宅へ伺って医療行為を
行うものである。
・
在宅医療には、医師が行う往診と訪問診療、看護士の訪問看護、作業・理学
療法士が行う訪問リハビリテーション、歯科医師の訪問歯科診療などがある。
(3)
在宅医療の流れ
・
日本の疾病構造が、感染症中心から慢性疾患者中心へ変わってきている。
・
要介護老人等の状況は、1995年では約170万人であったが、
2005年においては約250万人へ増加すると推計されている。
・
施設から在宅医療へという政策誘導がなされてきた。
診療報酬の新設、介護保険の導創設によって在宅介護の促進が促進された。
・
在宅医療は医師自己完結型ではなく、診療計画の下に看護婦、薬剤師、
理学療法士や作業療法士、MSW(メディカル・ソーシャル・ワーカー)、医療事務など
各職種とのチーム医療の展開が求められている。
(4)
在宅主治医が増えない理由
・
点数上のメリットがあるにも関わらず、在宅主治医の数は伸び悩んでいる。
・
医師の業務の範疇が広く、医療チームのとりまとめ約としての役割を果たす
ことになり、医師の専門外の分野について、他の医師との連携や既存の社会
資源の知識等も必要とされる。
・
緊急時のシステムを考えると、24時間対応可能な支援体制として医師1人では
その医師が継続して在宅医療を続けていくことは困難である。
・
病院の入院日数の短縮化に伴って、医療依存度の高い在宅患者が増加している。
・
既存の外来診療の場合、自然と午後の空き時間の2〜3時間が訪問時間となるが
そうすると診療できる患者の件数は少なく、重度の在宅患者の受け入れも困難。
・
医学部の教育プログラムの中に在宅医療の研修プログラムが少ない。
・
開業資金がかかる
・
在宅医療は、設備投資は比較的少ないが、質とサービス量を考えると、
労務費(運転資金)は通常の開業よりもかかり、患者が増加すればするほど
労務先行である在宅医療は運転資金が増加してしまう。
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C 診療所の悩みと対策の基本
経営根幹のコンサルが増えている(有料コンサルティング)
従来と比べ病医院の経営が難しくなってきている
【事 例】
事例1)医療収益(売上)が減少している
医療収益=診療単価×患者数
診療単価・・・年々減少傾向
理 由・・・診療報酬引き下げ改訂
解決策・・・レセプトの見直し=より高い点数(診療単価)がとれるような改善
院内研修・外部委託
診療時間・診療日の見直し
専門外来(栄養指導など)を充実させる
患者数…同じく年々減少傾向
理由1
患者自己負担増加による受信抑制
解決策
患者への説明の徹底
治療の必要性と医療制度改正による患者のメリット・デメリット
理由2
競争激化(医師・医療機関の増加)
解決策
患者との信頼関係を構築する(医師・看護婦の応対接遇)
診療所の外観・内装を改善する
事例2)医療の内容で迷っている
患者の需要が「病気を治す」から「健康維持・生活維持」へ
傾いていることを認識すること
[医師として求められる相談内容]
医療・予防・健康促進 〜
介護・リハビリ・生活支援 〜
衣料・食品・靴・住宅など
さらには家族支援介護保育といった「ファミリーケア」までも
多種多様な需要に応えるため、他社との連携体制の確立
他の病院・診療所・調剤薬局・老健・特養・在宅事業者・衣料・食材事業者・
住宅業者・美容関係者
事例3)医療と介護の関係で悩んでいる
医療と介護の連携は現実的にうまくいかない
医療職と介護職が相互の業務を尊敬し、意見交換する機会を作る
事例4)医療の質向上をどうしたらよいか
院長・看護婦の研修の充実…技術・知識のレベルアップ
ISOや機能評価認定の取得…標準化・合理化
事例5)患者への説明に自信がない
院長自身の問題
医療の勉強・研修
接遇・コミュニケーションスキルのレベルアップに努める
事例6)広告をどうするか
まずは、基本である患者の個別対応を充実させること
秘密保持・積極的な対応
インフォームドコンセント(十分な説明)・レセプトカルテ開示
デジタルカメラの活用による説明
コミュニケーションスキルのスキルアップ
次に、集団としての患者対応の充実をはかる
投書箱・アンケートの利用(イメージアップと弱点の克服)
そして、地域社会・患者予備軍としての患者対応
広告・広報の具体的方法
自院の医療情報=案内パンフレット・定期刊行物
一般の医療情報による啓蒙活動
インターネットによるホームページ・掲示板(デジタル)
病院祭り・健康教室などの開催(アナログ)
事例7)患者への接遇が低下したような気がする
職員の自覚を促し、自分たちで改善策を意見し実行するようにする
事例8)電子カルテをどのように検討したらよいか
電子カルテの役割・目的の確認
従来は効率化のため →
現在はデータの蓄積と医療の質の向上のため
オーダーメイドでは金銭的負担がかかり、内容的にも不満足となりやすい
既存の製品が自院で満足できるか否か
事例9)職員が身勝手な言動をしている
職員へ自院の経営理念・経営方針を周知徹底
職員ひとりひとりの言動・判断を尊重しながら指導
事例10)仕事の無駄があるような気がする
院長職員全員で無駄を認識し改善のための話し合いの場を持つ
事例11)職員間の業務分担が不明確である
診療所の規模に応じた命令系統を明確にする
院長・主任・看護主任・医事経理主任
事例12)銀行融資を円滑に受けれない
個人 黒字経営の維持
法人 役員報酬を減額してでも黒字にする
銀行からの高い評価を受ける
経営(改善)計画書をつくる(3〜5年程度)
経営理念・具体的な方針・損益計画を明確化
事例13)借入金利の引き上げを要求された
交渉(断固拒否の姿勢で値切る)
日頃から銀行から高評価を受けれるようにする(事例12と同じ)
事例14)外部委託者との関係をどう考えるか
費用対効果の分析(メリットデメリット)
レセプト業務などはコストアップしても増収効果がある場合もある
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【最後に】
小規模な医院・診療所でも事務長を配置するところが増えている
目的は、日常の業務管理を緻密にしサービスの向上・業務の効率化をはかること
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